隅田です。
前回に引き続き、第3弾です。シリーズ化も面白いですね。
今回は、非IT部門で勤務中で、エンタープライズ型BIツール 1 の導入にご尽力された方を弊社にお招きし、苦労したことや導入時に必要な考え方などを話していただきました。2
大きな主語になってしまいますが、まだまだ多くの日本企業(組織)では業務効率化が進んでいません。そのような中、エンタープライズ型BIを導入したという実績はものすごいことなのです。
彼は、どうやって上層部を説得して導入と運用を達成されたのでしょうか。詳しくまとめてみたいと思います。
導入事例:目指す姿を明確に
まずは「なぜBIを導入するのか」という話です。業務をPDCAのサイクルに当てはめ、本当に必要な業務が何かを検討していきます。
言い換えると、業務の内のどのステップに時間をかけていくべきかを整理したとのことです。箇条にすると以下の通りです。
- 営業リソースの最大化
計画と実行の部分に人員を割けるようにする(お客さまと接する時間を大切に) - PDCAサイクルの高速化
BIツール導入より、時短すべき仕事を時短する(集計、報告、対策)
当然の結果とも言えますが、BIツール導入前と導入後とで、本当に必要な仕事に人員を割り当てられるようになったとのことでした。
従来は経営層から訊ねられた時に業務担当者が回答する手間がありましたが、導入してからは経営層が直接データにアクセスできるようになりました。
また、経営側だけでなく、お客様の契約情報を可視化してサービスに付加価値を与えることも可能になりました。スゴイ!!
導入の壁:ステップを踏む
「そんなに便利になるなら導入した方がいい!」というのは誰もが考えます。しかし、中々実行に移らないから困っているわけです。その理由は大きく分けて2つあります。
ということなので、導入には手順を踏む必要があります。それを3つに分類していただきました。詳しく見ていきましょう。
①BIへの理解を深める
まず、BIツールについて知ってもらう必要があります。最も重要なのは「簡単なダッシュボードを作成した上でまずは触ってもらうことである」と、おっしゃっていました。
何も知識のない人に対して手放しで「はい、触ってみてください」と言ってもムリなので、コミュニケーションを取りながら情報を引き出し、相手のニーズに応えることが大切です。
当たり前の話ですが「あれできる?」や「これもできる?」に対して「できません」と回答しているようでは、使いたいとは思ってもらえません。つまり、誰よりもそのツールに精通していなければならないと云えるでしょう。
また、プレゼンする相手も選ぶことが重要であるとおっしゃっていました。これも当然かもしれませんが、必要に応じてトップダウンで指示を出してもらえるような、そんな重要人物を捕まえられることが望ましいです。
②BIを活用した業務遂行の提案
導入が上手く行ったとしても、定着化を図らなければなりません。次のステップは、BIツールを使った業務遂行の提案です。
ここでのポイントは、完璧を求め過ぎず、トライ・アンド・エラーを繰り返して作り上げていくことです。「要件定義→設計→開発→テスト→運用」のサイクルを何周も繰り返しながら開発を進めていくことです。
これをIT業界では「アジャイル開発」と呼んでいます。迅速な開発を進めていると、いつの間にか、ツール作成前に整理していた「達成目標」から外れてくることもありますが、その場合は別のツールでの対応を検討するようにします。
理由は単純で、BIツールを使うことが目的ではなく、あくまでも業務効率化が目的だからです。
③BIに合わせた業務の見直し
BIでの業務が定着したタイミングで、さらに業務を見直していきます。具体的には、データ管理方法を見直すなど、BIの効果を最大限に活用するための業務改善を進めていきます。
業務改善の大敵と言っても過言ではないと思いますが、本当に必要な情報(=鮮度の高い情報)ほど、属人化されていないツール(Excelなど)が使用される傾向にあります。
そして、そういったツールで管理されたデータは、入力規則が整理されていなかったり、ピボットテーブルになっていたり、セルが結合されていたりするものです。キー項目がなかったり、入力漏れやミスがあったりもします。
その点に関しては、BIによるデータ・クレンジングも可能です。しかし、構造化されていないデータをその都度BIで改修しているようでは、本当の意味で業務効率化されたとは言えません。3
したがって、積極的にデータを蓄積するシステムとしてデータベースを導入し、メンテナンスや整形にかける時間と労力さえも大幅に小さくしてしまうことを考えます。
BIを開いたらすぐに可視化できるという状況、BIの能力を最大限に活用するためのデータ管理が理想であるといえます。4
作成の進め方:整理すべき事項
ツール作成に先立ち、以下の3つを整理しておけば開発のイメージは固まるのだそうです。
- 誰が利用するのか
ニーズに沿ったツールを作成でき、効果を高めることができるため、対象のユーザーはある程度限定させる方が良いです。 - ツールで達成したい目的は何か
あくまでも例ですが、Excelで共有している内容を、ツール画面上で誰もが確認できるようにしたい、報告書の作成時間を削減したい、収益拡大に繋げたいなど、目的を限定しておくことが大切です。 - ツールの使用頻度
ツールの使用頻度に応じたデータ管理の仕組み(更新頻度)を検討する必要があります。例えば、キャッシュを利用してデータを取得することで処理速度を高めたり、クエリの費用を削減したり、あらゆるパフォーマンス向上には欠かせないからです。
まとめ
- BI導入事例のご紹介
- BIは “PDCA” のうち “CA” において大幅な改善効果が期待できる
- BI導入にあたってぶち当たった壁
- 人の壁
「理解促進」→「業務定着化」→「本格展開」の手順で導入を進めていく - データの壁
BIによるデータクレンジングに頼りすぎず、BIに合わせたデータ管理を考えていくことが重要
- 人の壁
- ツール作成の進め方
- 「誰が使うのか」「目的は何か」「いつ使うツールなのか」を整理
- ツール作成はアジャイル開発で進める
- 目的から外れる場合は、別のツールを検討する
ありがとうございました!
「業務改善するぞ!」と意気込むまでは良いものの、筆者も含めて具体的にどうやったらよいのかが分からない人が多い中、要点をスッキリとまとめていただきました。
スッキリとまとめていただいたおかげで良い部分だけがクローズアップされていたように感じました。聞けば、彼は今回が社外初講演とのこと(嘘でしょ!)
それほど整然としていたため、あまり苦労をされていないように錯覚してしまいますが、ここまで浸透させるのには多大なる苦労と莫大な時間を要したはずです。
ツールの導入までは上手く行っても、浸透させることが難しかったりするものなのです。
この度は、非常に貴重な体験談をありがとうございました!今後、ますますのご活躍をお祈りいたします。